雨桐悠生 雨さんの軌跡 (女性として生きる事を選択した人の奇跡)

半世紀過ぎてからGIDでMTFだと診断された人です。化粧品のアンバサダーモデルもやってたりします(*´∀`*)

MTF日記(72回目) 差別的な主張について考える

ある方から、ちょっと意見を求められたので、最近のトランㇲジェンダーへの差別的な主張について、少し見解を書いたので、今回ここに備忘録として載せてみます。


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先ずは改めて私の現状というか、リアルについて少し認めておきます。

私は、首都圏在住の看護師として働くトランスジェンダー女性です。

私は在職中にトランスジェンダーとなり、会社の方々に打ち明け、その後名前の変更等を経て、今年夏に転職し、新しい会社でも女性として働いています。

 

最初にスペース(施設利用)に関して

現在の会社の施設内では、トイレ、更衣室等、会社との合意、許可を得て、女性用を使用していることを、まず申し添えておきます。

 

私は40を過ぎてから、時間をかけて女性として社会的に生きる準備を進め、受診や治療、カミングアウト等、実際に具体的に踏み出したのは50を過ぎてからでした。

トランスを考えるにあたり、当初は大変ネガティブな情報しか得られた事はなく、なかなか難しいと自分でも思い、打ちのめされたり、諦めかけたりしながらも、何とか生きてきました。

 

自身の交友関係や社会的な環境を考慮しながら生活していく中で、自分の死を意識するような出来事が重なった事もあり、自死以外の死を意識することで、自身を偽り、我慢したまま、精神的に無為な人生だったと、死ぬときに思いたくないと、今まで以上に強く願うようになります。

 

周囲にバレないように生きる事に必死で、長年願っているだけだった私が、どうしたら周囲にトラブルを起こさないで本来の自分を表出出来るのか。

どうしたら自身が変化しても不快感を与えないで済むのか。

試行錯誤しながら、体型や肌、体毛や体臭、服装等、女性として自然に捉えてもらえるように、10年以上コツコツと少しずつ努力してきました。

 

そして具体的に行動を起こすために、医学的にも、世間的に裏付けを持って、自信を持って説明が出来るように、GID学会の認定医を探し、時間とお金をかけて、ガイドラインにそった通院、診察のもと、GID(mtf)の診断をうけました。

 

周囲にも信頼している方から打ち明け始め、診断後に判定会議を経て、正式にHRT治療も始め、やっと本格的に進み始める事が出来ました。

 

それからまだ1年足らずの私ですが、現在の環境を得る前は、私も所謂スペースの問題に、今よりとても苦労してきました。

 

私はトイレに関しては、女性化していく中でも、ずっと男子トイレを使用していました。

しかし段々と女性化が進むにつれてトラブルが増えてきます。

 

最初は私がいると、入ってきた男性が驚いて出ていってしまったり、びっくりされたり、時に怒鳴られたりする感じでした。

ストレスでしたが、仕方がないと諦めていました。

 

しかし、段々とその頻度があがって来るにつれ、毎回のように周囲に迷惑をかけている現状に傷つき、それは私自身にも凄くストレスで、我慢したり、共用トイレを可能な限り使用するように変わっていきました。

 

そして、それが100%の確率になり、怒鳴られたり、入口で暴力的に追い出されたり、通報されたりするようになってしまいます。

 

嫌気がさしますが、共用トイレがない場所もあり、やむなく男性用トイレを使用すると、痴女呼ばわりされ通報される。

説明の為に明かしたくもない自分のidentityを、見ず知らずの人に詳しく明かさなければならなくなる。

そんな嫌な思いをしながらも、私が我慢すれば良いのだと、そんな経験を繰り返していました。

 

そんなある日、痴女呼ばわりの上に、強制され個室に追いやられ、性的暴行を受ける事になります。

屈辱的な暴言を浴びせられ、性的な暴行を受けたのです。

殺されるかも知れない恐怖と、暴行の恐怖で私はあまり騒いだり出来なかったと記憶しています。

暫く憔悴して、仕事に行けないどころか、外出も出来なくなる酷い体験でした。

 

当事は診断書もないし、自分のidentityも自身で話す以外の方法がなく、恐怖感も強くて、事後逃げ帰るしかなく、泣く泣く泣き寝入りしました。

どんな暴行を受けたか、詳細は思い出したくもないので書きません。

今でも書いているだけで落ち込むので。

 

私は意識して男性で暮らした若い頃から、電車で痴漢にも複数回あっていますが、受診前辺りから以前に比してとても回数が増えたり、被害が増えてきて、かなり環境が変わりました。

少しフェミニンな要素がファッションに混ざってからですね。

 

単純に夜道でナンパされるのはともかく、更につけ回されたり、引き倒されたりする被害にあったりしたこともあります。

あとは駅でよく中年以上の男性にぶつかってこられたり、押し退けられたりします。

酔った男性達に絡まれたりね。

世の中がこんなに酷いとは思ってもみませんでした。

 

まぁ八百屋さんでオマケしてもらえたり、良いことも少しあるんですけど笑

 

私が女性としての経験値が少なく、警戒心が足りなかったのかも知れませんが、それを差し引いても、凡そ女性が受ける恐怖の経験は、私の場合、特に歩みだしてから結構な頻度で遭遇していると思います。

 

まぁそんなわけで、男子トイレで性的暴行を受けてから、私が男子トイレに入る事は絶対に絶対に無くなりました。

当たり前ですよね…

 

さて、私の経験を踏まえて、考えてみて下さい。

誰が好き好んで男性用に入ると思いますか?

私が男性用トイレに入れなくなったのは当たり前だとは思いませんか?

女性的な格好をしている方が悪い?

Tシャツにジーンズでも被害に合うのに???

 

 

診断を受けて治療が始まってから4ヶ月目。

私は転職し、転職後の職場では、私のidentityを打ち明けた上で、会社に施設利用の判断を委ねました。

会社内で被害に合うとは考え無かったから。

だから私はお任せします。と伝えて、主張したりは一切しませんでしたし、個人的な被害経験についても、勿論告白していません。

それでも、結果として会社から女性用を使用するように言われ、現在社内では、女性用トイレを安心して使用しています。

 

被害にあったあと、診断されたクリニックの先生の診察に行った時に

「ええ?!男子トイレ使うの?未だに?駄目だよ○○さん!駄目駄目駄目!自分の外観を自覚しなさい。」

とトイレは女性用を使用しないと駄目だと怒られ、自身の客観的な現状を理解しておらず、困惑して涙した覚えがあります。

その後は友人にも促され、今は共用がなければ、女性用を使用するようになりました。

 

トイレは前述の通りですが、お風呂等はまた問題が異なります。

個室では無いし、裸になるのですから。

 

私だけでは無いと思いますが、私達GIDの殆どは、基本的には自分の身体に違和感や嫌悪感があり、他人に見られたくありません。

特に私のように未オペであれば、恋人にさえ見られたくない人が多いと思います。

そしてみた方も、恐らくは驚くのでしょう。

 

だから、私は何年も公衆浴場は利用出来ないので、お金を払って、貸し切りや個室にしか入った事がないです。

何年も前、男子トイレで被害に合う前に、友人と公衆浴場に行った事があります。

渡されたのは女性用のお風呂のロッカールームの鍵と室内着でした。

私はまだ戸籍男性であることを明かし、男性用に入れて貰えないか交渉しましたが断わられ、この時私はどちらも利用することが出来ませんでした。

 

同様の事が2軒続いてから、私は行くのをやめ、以来公衆浴場に行く事はなくなりました。

利用出来ないのですからしょうがないですよね。

 

だから、自宅以外でお風呂に入れるのは、温泉宿等の高額な貸し切り風呂。

それ以外は部屋付きのバスルームだけなのです。

 

こんな私の経験、暮らしを知った方はどのような感想を持ちますか?

周囲に気を遣って生活を続けていても、普段の生活に色々な制約を受け、それでも時に被害にあったりしながら生活しています。

 

それを不満としてどこかにぶつけた事もありません。

周囲を気にしながら、トラブルが起きないように、慎重に暮らしてきたのです。

 

でも、今、女性スペースの会?と言う方々の主張を散見すると(悲しくなるので、なるべく見ないように関わらないようにしています。)私は女性の安全を脅かす存在だと名言されています。

被害にあったのも、安全を脅かされたのも、制約を受けているのも私なのに?

私と同じような目に全員があってるとでも?

 

トイレで盗撮してネットに上げる犯罪者は女性も男性もいるでしょう。その総数はトランスジェンダーよりずっと多い。

お風呂での性的な犯罪者も同じです。

 

当然ですが、私も男性に強い恐怖感はあります。

実際に酷い犯罪被害にあっていますから。

セクハラなんて、数えきれないです。

 

トランスジェンダー女性が安全を脅かすと主張する人達に言いたい事があるとしたら、私の経験を見てどう思われるのか?です。

 

女性でも、私のような屈辱的な酷い性被害にあったことがない人もいるはずです。

それなのに想像でトランスジェンダー女性について、レアケースの事件報道を見て、自分が恐れる男性のイメージで、差別的な発言をしていませんか?

 

トランス女性を攻撃しているのが男性であれば、それこそ恐怖も理解出来ないのに、勝手なイメージで攻撃している事が明らかではありませんか?

 

この経験を理解して、尚そんな勝手なイメージを持てるとしたら、それは貴方自身の性質で、自分を投影しているのだと気付いて恥じて下さい。

 

私のような経験がある方は、少なくとも私に対して酷い差別的な事は言えないと思うのです。

私は同様な被害者の方々の恐怖感を否定することが出来ません。

だから、そういう女性もいると仮定して想像すれば、職場でも自分から要求することはしなかったのです。

 

だからね、同じ様に被害経験をした方は、私の悲しみや恐怖も理解出来ると思うのです。

必ずトラブルになる場所へ自ら入る恐怖を。

そこで受けた性被害が蘇る恐怖を。

 

現状で、苦労して問題無く暮らしている私達を何故可視化して問題にしようとするのか、差別的な言葉を投げつけられるのか、しかも知らない人なのに勝手に主語を大きくして、勝手な想像で。

私には全く理解できません。

 

ジェンダーに限らず、平気で人をカテゴライズして、排除に動き出せる人間性を、私は酷く恐ろしく思います。

とても悲しく思うのです。

 

それでも、私はそういう人達と戦おうと言う気持ちにはなれないのです。

私はなるべく平穏に、私と私の大好きな周りの方々が心安らかに暮らせるように、それだけを望んでいるのです。

 

私には女性スペースの会?がどんな会なのか、関わりたくないのでよくわかりません。

ですが、その主張、口調は、私のようなトランスジェンダーの個々の実態を全く知らず、主語が大きく、侮蔑的である事は理解できます。


個別の問題を属性として一般化することは、無理があることを、本当に理解してほしいと思います。

 

自分で読み返してみても、世の中に絶望しそうな話ではありますが…

それを甘受して、苦しい思いをただただ我慢している人がいることに、一度思いを馳せてみて欲しいなって願っています。

 

実際はね、幸運な事に私の周りに母以外にそんな人はいません。

仕事場にしても友人にしても、皆さん優しくて、私は真面目に、幸せに生きていますから大丈夫です。

 

酷い人より、良い方が多いと実感している事を、最後に申し添えておきます。


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